『組織戦略の考え方』の読書メモ。
要するに
プレジデントに連載されていたコラムをアレンジして書籍化したもの。著者の主張は「組織の機能はヒト次第。構造は何も解決しない」です。組織デザインというと、カンパニー制やマトリックス組織などありますが、そういう構造の議論は往々にして組織で働くヒトにはフォーカスしていません。結局のところ、組織を構成する人間が主体的に思考し、実践することが大切。実にシンプルな考え方です。
フリーライダー問題やマネジメントの決定力不足、組織の腐敗のメカニズムなど、具体的な問題にも触れています。
自己実現よりも承認を
なるほどと思ったのが、マズローの欲求段階説について。あの「自己実現欲求」がトップに来るピラミッドです。
各人が勝手に自己実現しようとし続けてくれるので (略) 金銭的なインセンティブとも無縁だから給料を上げる必要もない。従業員が勝手に仕事で自己実現してくれるなら、会社にとっては安上がりなのである。
日本企業では、いつの頃からか、「自分の生きがいを会社内で追求する権利がある」と自分で思い込んでいる人が多くなった。(略) 近年では会社は皆が「自己実現する場」であると勘違いしている若手が多い。
厳しい意見です。しかし、崇高な「自己実現欲求」よりもその下の「承認・尊厳欲求」の方が実は大切で、仕事でうまくいったらちゃんと褒めろ。部下にはまず勝ち戦を経験させて有能感を獲得させろ。と著者は主張します。私もそう思います。自己実現という単語はどうにも胡散臭い。シンプルに「目標」と置き換えた方がいいのではと思います。また、企業の最終目標は利益を上げて経営を続けることです。会社が潰れたら自己実現も何もありません。