ビジネス交渉と意思決定

ビジネス交渉と意思決定―脱“あいまいさ”の戦略思考』を読んだ。ハウツーものではなく、交渉における理論や概念を解説している。これで、印南一路さんの著書は一通り読んだ (身に付いているかは別として)。

以下、付箋を貼った箇所のまとめ。

BATNA (Best Alternative To Non-Agreement)

交渉が成立しなかった場合の最良の代替案。いわゆるボーダーライン。自分の BATNA と相手の BATNA の間が交渉ゾーンとなる。

返報原則

善意を与えられたら善意を返さねばならないという普遍的原則。交渉に強く働く。重要。

交渉には 3 タイプある

  • 分配型交渉 (ゼロサム)
  • 利益交換型交渉 (WIN-WIN)
  • 創造的問題解決 (問題の再定義)

ただし 3 つは必ず排他というわけではなく、複雑に絡み合う場合もある。分配型交渉は、固定パイ幻想に陥るので避けるべき。

ポジティブ・フレームとネガティブ・フレーム

人は、ポジティブ・フレームではリスク回避型になり、ネガティブ・フレームではリスク志向型になる。例えば、100% の確率で 1000 円貰えるくじと、10% の確率で 1 万円 貰える (90% の確率で何も貰えない) くじでは、前者を選択する。これがポジティブ・フレーム。100% の確率で 1000 円失うくじと、10% の確率で 1 万円 失う (90% の確率で何も失わない) くじでは、後者を選択する。これがネガティブ・フレーム。両方とも期待値は同じ。

交渉では、相手がポジティブ・フレームでとらえるように誘導すればよい。

きわどい交渉テクニック

基本的に使わないが、予防と対策のために知識は必要。きわどい交渉テクニックを使う者は、固定パイ幻想に囚われている可能性が高い。

  • 迎合的関係の形成
  • ゲームズマンシップ
  • 約束と脅し
  • 疑似説得的主張
  • 感情の人質
  • ローボーリング
  • ベイト・アンド・スイッチ (釣った魚に餌はやらない戦術)
  • 最後通告・通牒
  • キンゲーム (瀬戸際戦術)
  • 蒸し返し
  • キッチンシンク (おとり戦術)
  • 権限のない振り戦術
  • 交渉者の交代
  • アジェンダ・コントロール
  • 「拒否させて譲歩獲得」戦術
  • 二段階要求戦術

信頼スパイラルと不信スパイラル

信頼は信頼を生み (返報原則)、不信は不信を生む。「信頼による取引成立のメリット>不信による取引回避のメリット」なので、相手が信頼できるか不明な場合も、信頼するリスクを取り返報原則に期待した方がよい。